私は女優でミステリーハンター
どうも。ミミィです。
えー。私が初めて買ったスーパーファミコンのソフトは「勝手にシロクマ」というRPGでした。みなさん、このソフトをご存知でしょうか?恐らく、RPG史上1番平和なRPG。物語は、主人公のシロクマが友人のうりぼうと共に旅に出てその途中の様々な困難にうりぼうと共に立ちm..
誰が興味あんねん
さてみなさん。
突然ですが、あなたはミステリアスな体験、したことありますか?
今さっきあったけどね
今回は、何年か前に私が体験したこれまでの人生の中で一番謎が深かった、あるお仕事のお話をさせてください。
結婚式友人代行というお仕事
もう何年も前のある日、当時お付き合いしていた彼が一緒に行かないかと持ちかけてきた話。
それは、結婚式友人代行のアルバイトでした。
彼は、知人の紹介をきっかけにこのアルバイトをたまに受けていたらしいのですが、当時の私はこんな仕事が存在するとは初耳で。
なんでも、”新郎新婦の友人のフリをして出席するだけ” でお金をいただけるとのこと。
その報酬は、拘束時間2時間でなんと1万円。
た、、ただ2時間、食べたり飲んだりしただけで1万円・・
時給換算で5千円・・・っ?!
なんだその世界は!?
そう、何を隠そう、私はミステリーハンター。
初耳
使命感に駆られた私は、このミステリアスで、かつちょっぴり怪しいその世界の実態を調査すべく満を持して立ち上がったのです。
要はお金に釣られたってことな
ルール厳守
ただ、このお仕事をするには、いくつかのルールがあり、それらを守らねばならないとのこと。
①本業務を口外してはいけない
②本業務に関係のないことでも業務当日にSNS投稿をしてはいけない
③会場では最低1回は依頼人(新郎or新婦)の元へ行き、友人として会話すること
④与えられた役になりきること
②のSNS投稿に関しては、全く関係のないことでもとにかく「投稿するな!」と当時の彼にきつく言われイラっとしたっけ。
”今日も空が青い。地球も息をしている。私たちはみんな、一人じゃない”
これくらいの投稿は許して欲しいところだ。
センス草
私は女優
実は、このミッションの依頼主は新婦の方でした。
私と彼は、新婦の友人役として役名もきっちり決められていたのです。
もう記憶が曖昧なので適当ですが、
彼が「藤本隆」
私が「藤本綾子」
と、このように夫婦としての役名でした。
しかも、私が一番驚いたのは、会場にいる新婦側のすべての参加者が代行アルバイトの人間であるということ。
てっきり、人数合わせのために一部を代行にしているもの、と思っていた私はびっくり。
新婦サイド全員が、謂わば偽物の友人。
理解ができない。
そもそもそんな状態で式を行う必要があるのか?
え?まさか新婦は偽物じゃないでしょうね?
更に怪しさを増す今回のミッション。
ふふふ。面白いじゃない。
いいわ、やってやろうじゃないの。
そう。私は女優。
”藤本綾子” になりきってやろうじゃないのっ!
舞台
舞台は名古屋市内のオシャレなレストラン。
今回はいわゆる1.5次会という、結婚披露宴と2次会の中間のようなレストランウェディングでした。
私たち藤本夫妻は、受付を済まし新婦側の決められた席に座ります。
もうここで既に、何か悪いことをしている気がしてしまう臆病な藤本綾子。
しかし、そんな綾子のすぐ横で、慣れた様子で座る藤本隆。
そんな余裕ぶる隆の様子にイラっとする綾子。
隆と綾子が座る丸テーブルに、他の参加者が座ります。
みんなどこにでもいそうな、普通の男性たち。なんとなく、ソワソワしているようにも見えます。
新婦側の参加者はこの会の事情を知っているので、目が合うとお互い言葉は発しないものの「ハハ、なんか、変な感じですよね」と言わんばかりの表情で無言のコミュニケーションを取り合います。
私たちと一緒のテーブルの人たちも、周りのテーブルの人たちも、全員が代行なのだと思うとすっごく変!
しかも今思えば、新婦側の参加者なのにほとんど女性がいません。当時はこういうアルバイトに登録している女性がそもそもあまりいなかったのかもしれない。
代行会社は少しでも女性参加者が欲しかったのでしょう。
隆が私を誘ってきたのも納得です。
新郎側と新婦側
新郎新婦登場までの、なんとも言えぬこの変な時間。
手持ち無沙汰な綾子はどうしても、新郎側の席も気になってしまいます。
新郎側も代行だったとしたらどうしよう。まじやばい、ウケるんですけど。
しかし新郎側は、同じテーブルの人たちは共通の友人でまとめられているのか、和気あいあいとおしゃべりを楽しみ、不自然な様子は全くありません。
一方の我々新婦側。
おしゃべりもぎくしゃく。隆は懸命に隣の人に話しかけたりしているが会話なんてちっとも弾まず。お互い笑顔も引き攣っています。
当然です。だって今日初めて会ったんだもの。
新郎新婦登場
会場の照明が落とされ、ようやく新郎新婦の登場です。
よくあるタイプの感動的な音楽と共に扉が開かれ、幸せそうな笑顔で現れた新郎新婦。
この時綾子は、依頼主である新婦がどんな人なのか興味津々。瞳孔を開いて観察します。
新婦は、細身のキレイな20歳後半くらいの女性でした。芸能人で例えるなら、木下優樹菜さん、でしょうか。ちゃきちゃきしている感じです。
そして先入観のせいか、何かしら闇を抱えているように見えてしまう。
対する新郎は、優しい笑顔が印象的な、体ががっちりとした体格の男性。歳は35〜40歳くらい。芸能人で例えるなら、髪の毛にもう少し余裕があり、体を引き締めた三浦マイルドさんのよう。とにかく優しそうなオーラが溢れていました。
新郎新婦が着席し、ようやく揃う役者たち。
舞台が整いました。
接触
宴は粛々と進みます。
私がこれまで参加してきたものと何ら変わりません。
美味しいお料理が提供され、お酒も楽しみます。
ただ、変わらずあまり盛り上がることのない重い空気が流れる新婦側。
一方の新郎側はどうでしょう。
こちらは高砂で新郎の友人が集まり賑やかに乾杯が始まりました。
そしてこのタイミングを見計らっていたかのように、私に「挨拶に行こう」と言う隆。
そうです。前述のルール、③の”新婦の友人として会話をする” です。
いわば、隆と綾子の今回唯一の出番。
いよいよ主役に接触です。
友だちのフリ
私たちは今日初めて会った新婦に、友人のフリをして話をしなければなりません。
隆はしっかりとした足取りで高砂へ。綾子は緊張しながら隆の後を付いていきます。
新婦のところまで着くと、「おめでとう〜!」と見たこともない高めのテンションで話しかける隆。
俺、回数こなしてるんで。と言わんばかりのイキッた隆のその様子に若干引く綾子。
そして「お、おめでとう〜!」とようやく声を振り絞る綾子。
さて新婦、どういう反応をするのでしょうか。
「わぁ!今日は来てくれて、ありがとう〜!!」
新婦は溢れんばかりのキラキラした表情で、まるで昔からの友人に会った時のようです。
く・・・っ!大女優がっ!
微笑みつつ心の中で毒吐く綾子。
正確の悪さよ
ただし、綾子は見逃しませんでした。
私たちが近づいてくるのを察した時、「え?この人たちどっち?私の友人?」と新婦が状況を把握するのに必死であったことを。
また終始、彼女の目が笑っていないことを。
そしてここで新郎が「あ?お友達?」と優しそうに新婦に尋ねます。
ふふ・・さぁ、新婦どうするんだいっ!どう答えるんだいっ!
新婦:うん、そう!ね、お友だちぃ。
ーうんうんと微笑みながら頷く隆と綾子
新郎:そうなんだ!何友だち?(私達を交互に見ながら)
新婦:・・・今日は来てくれて本当にありがとうね!楽しんで行ってね!(聞こえないフリ)
ー隆と綾子、後ろが詰まっていると慌てるフリして退散
隆と綾子、出番終了。
あっけなく終わりました。
依頼人(新婦)も良く知らない人間(代行)にウロウロされても困るのでしょう。新婦の方が早く終わらせようとしてくれるので私も助かりました。
違和感
その後、新郎が締めの挨拶をして、無事ミッションは終了。
それにしても、事情を知っているとは言え、違和感ばかりの会でした。
まず、
新郎新婦両家の親族がいない。
新婦のこれまでの生い立ち紹介が超ざっくり。
新婦側友人代表スピーチがない。
新婦側友人の出し物がない。
1.5次会という多少特殊な会であるという特徴を上手く使い、全体的にぼんやりとさせつつの中身のない空っぽの会でした。
でも無理はありません。何せ新婦側は全員偽物ですから。中身の入れようがないのでしょう。
ミステリアス
全てが終わった後の帰り道。無駄なこととは知りつつも、考えてしまいました。
なぜ、友人全員がサクラである必要があったのだろう。
代行者一人あたりに1万円を出してまで、なぜ取り繕う必要があったのだろう。
最悪、彼女が結婚詐欺師だとしたら、犯罪者に加担してしまったことになるのではないだろうか。
まぁ考えてもキリがないのですが。
この件は私の人生の中で、今でも最もミステリアスだったお仕事です。
ふしぎ発見
さぁ、どうでしょう。
あなたがこれから参加する披露宴、何気なく座ったその隣の人は、本当に、関係者ですか?
今日もどこかで、誰かが誰かになりすまし、それが商売として成り立っています。
あなたもぜひ、周りを見渡しふしぎ発見!!
あとがき
その後、隆役を立派に努め上げた当時の彼とはほどなくして別れました。
なぜかって?
彼の”隆”としてのイキった演技に心底引いてしまったのです。
ある種の本性を見てしまったようで・・。
なんか・・すみません。
代行アルバイトをしている方、あるいはこれからする方、カップルとは行かないほうが良いかもしれません。
仕事の内容が内容だけに、平然とこなしている姿を見て、なんとなく相手のことが信用できなくなる可能性があります。
私のように。
ただ、人生経験としては非常に面白い経験でした。
ブログを始めた今、もしもう一度この仕事を受ける機会があれば、今度は私がイキって参加することでしょう。
ふふふ。
その時、私は女優でミステリーハンター。
おしまい☺